結論:織田信長の若き日を描く、時代物として質の高い一作(評価3.5)

いくさの子 ‐織田三郎信長伝‐

乃木坂太郎 ・ 連載中

3.5

この人の漫画は時代物にぴったり

筆者は「いくさの子 ‐織田三郎信長伝‐」を最後まで読み終えており、率直な評価は5点満点中3.5だ。一言でまとめるなら『この人の漫画は時代物にぴったり』という実感に尽きる。織田信長の若き日、いわゆる「織田三郎信長伝」の時代を舞台に、バトルと成長という要素を絡めながら物語を描く歴史漫画で、乃木坂太郎という作者の資質が時代劇と非常によく合っていると感じさせる仕上がりになっている。歴史ものというジャンルの中でも、読み応えのある一作としてまず名前を挙げたい作品だ。

「いくさの子 ‐織田三郎信長伝‐」はどんな作品か

作者は乃木坂太郎、出版元は小学館で、「ビッグコミックスペリオール」に掲載されている作品だ。連載開始は2020年で、本稿執筆時点でも連載中の状態が続いている。想定読者層は青年向けとされており、大人が読んでも楽しめる骨太な作りになっている。付けられているタグは「バトル」「成長」「歴史」の3つで、タイトルが示す通り、主人公は織田信長の若き日、すなわち「織田三郎信長伝」と呼ばれる時代を描く。史実をベースにしながらも、単なる伝記としてではなく、バトルと成長という娯楽性の高い要素を組み合わせて描いている点が、この作品ならではの特徴といえるだろう。掲載誌である『ビッグコミックスペリオール』は青年向け作品を数多く扱うレーベルであり、本作もそうした媒体の傾向を反映してか、単なる娯楽色の強い歴史ものというよりも、じっくりと腰を据えて読ませるタイプの作品に仕上がっている。

良かった点

筆者が本作を通して読み終えて感じたのは、何よりも歴史物としての完成度の高さだ。一言評価にも表れているとおり、『この人の漫画は時代物にぴったり』というのが率直な感想で、乃木坂太郎という作者の資質が時代劇と非常に相性が良いことがよく分かる。『バトル』『成長』『歴史』というタグが示す通り、単なる史実のなぞりではなく、主人公の成長物語としても、活劇としても読みごたえのある構成になっている点が魅力だ。青年誌らしい骨太な作りで、歴史ものを読み慣れた読者にも満足できる仕上がりになっている。評価としては3.5という数字にも、そうした完成度の高さがしっかり反映されていると感じる。タグごとに見ても、『バトル』の要素は緊張感のある展開を生み出し、『成長』の要素は主人公の変化を丁寧に追わせてくれる。『歴史』というタグが示す通り、史実を土台にした重みも感じられ、これら3つの要素がバランス良く組み合わさっている点が、読んでいて飽きさせない理由になっていると思う。

気になる点

評価は3.5と高水準ではあるものの、満点ではない。本作は現在も連載中で総巻数も確定していないため、物語がどのような着地点を迎えるのかはまだ見えていない。信長の生涯という長い題材を扱うだけに、完結までにはまだ時間がかかりそうで、読み始めるタイミングによっては『続きが気になるところで止まってしまう』という点は留意しておきたい。筆者自身は最後まで読み進めているが、完結を待ってからまとめて読みたいという人には、現時点では少し気の長い付き合いになる作品だと言える。総巻数がまだ確定していない以上、序盤・中盤・終盤どのあたりまで読み進めているのかが分かりにくいという点も、読み始める前には意識しておいたほうがよいだろう。評価3.5という数字は、決して低い評価ではないものの、5点満点中5の作品と並べたときには、まだ物語の途中であるがゆえの伸びしろも含んだ数字だと筆者は捉えている。今後の展開次第で評価が変わってくる可能性もある作品だ。

こんな人におすすめ

織田信長を題材にした歴史漫画が読みたい人、バトルと成長の要素を両方楽しみたい人には特におすすめできる一作だ。青年誌らしい骨太な歴史ドラマを求めている人や、乃木坂太郎という作者の時代物としての筆致に触れてみたい人にも向いている。逆に、完結済みの作品を一気読みしたい人は、連載中である点を踏まえて読み始めるタイミングを考えるとよいだろう。また、評価3.5という水準からも分かる通り、派手さよりも作品としてのまとまりや作者の筆致そのものを味わいたい人にも合っている。タグで言えば、『歴史』が好きな人はもちろん、『バトル』のような迫力ある展開を求める人、『成長』ものとして主人公の変化を追いたい人、そのいずれの読者にもすすめられるバランスの良さがある作品だ。

合わせて読みたい

織田信長を扱った歴史漫画をもっと読みたい人向けに、あわせて読みたい関連作品を3つ紹介する。いずれも「いくさの子 ‐織田三郎信長伝‐」と同じく、信長やその時代を題材にした作品だ。巻数や完結状況もあわせて紹介するので、読む順番を考える参考にしてほしい。

1. 信長協奏曲

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石井あゆみによる、織田信長を題材にした歴史作品。全19巻で完結しており、評価は5点満点中5、『めちゃくちゃつじつま合わせが上手い。これは名作。』という一言評価が付けられている。同じ織田信長を主人公にした作品でありながら、切り口や描き方は大きく異なるため、『いくさの子』と読み比べてみると、それぞれの作品ならではの面白さがより際立つはずだ。

2. 陽だまりの樹

陽だまりの樹

手塚治虫 ・ 全11巻 ・ 完結

手塚治虫による、幕末・戦国期を描く重厚な歴史群像劇。全11巻で完結済みの作品だ。『いくさの子』とは時代も視点も異なるが、同じ歴史群像劇として、じっくりと読み応えのある物語を楽しみたい人には特にあわせて読んでほしい一作だ。

3. 信長

信長

原作:史村翔 作画:池上遼一

原作:史村翔、作画:池上遼一による、織田信長の生涯を描く歴史漫画。信長を主役に据えた作品として、『いくさの子』『信長協奏曲』とあわせて読み比べれば、同じ人物を題材にしていても作品ごとにこれだけ描き方が違うのかという発見があり、より一層楽しめるはずだ。織田信長という一人の人物が、作品によってどのように描き分けられているかを比較しながら読む楽しみ方もできるだろう。